2つの屍の傍らにいたのは、まだ幼さの残る一人の少女。
屍を見下ろす少女の目には、何も映ってはいなかった。

少女――は夫婦を殺める直前に言われた言葉を思い出す。


「人殺し、か。その通りだ……」


初めてのその感触は、とても虚しく、お世辞にも気持ちのいいものとは言えなかった。

ずっと分かってた。
分かってたけど、実際に体験してみるのとでは訳が違う。


「……どうしちゃったんだろう、私」


忍は汚い仕事を淡々とこなす。
返り血を嫌というほど浴びて帰ってきた仲間を充分見てきた。
忍びはそういうものだ、って理解しているつもりだった。


「……理解しきれてなかったんだ」


片手で顔を覆い、感傷にひたっていると、後ろから低い声が。


ー、終わった?」
「あ、長、終わりましたよ」


振り返ると、自身の上司である忍隊の長、猿飛佐助が。
必死で笑顔を取り繕うも、佐助は容易にそれを見透かす。


「忍、やめたくなった?」
「い、いえ。そんな……」


正直焦った。
当然のように怒られるかと思ったから。


「その感覚、忘れちゃだめだよ。人を殺めるっていうことはそういうことなんだから」
「え……」
「忍は殺すことに迷っちゃいけない。感情を押し殺さなきゃいけない。だけど決して慣れちゃいけないんだ」


その言葉は真っ直ぐにの心に響いた。

ふと、佐助の指が頬を伝っていた滴を拭い取る。


「涙……泣いたのなんか、久し振り……」


静かに涙を流すは、年に相応しくないように見える。


「お疲れ様。ゆっくり休みなよ」


そう言って、佐助は静かにを腕の中に包み込む。
佐助の言葉や行為は、の心を静かに楽にしてくれた。




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暗い! 暗い!
短い!

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090818