祭りがあるということで、久し振りに実家に帰ることになったのだが、なぜか隣には無邪気な主が。
さらにその隣には、装束を着ていない忍。
「なんでなんですか……」
「本当にごめんねー」
帰郷することは前々から主にも言ってあったのだが、運悪く祭りがあることまで知られてしまい、今に至る。
何も祭りのためだけについてこなくてもいいものを。
どんだけ祭りが好きなんだ。
主――幸村がついてくると聞かないため、必然的に用心棒代わりに忍――佐助も同行するはめに。
最初は佐助にも同情していたが、なんだかんだ佐助も楽しんでいて、少し苛つく。
そもそも久し振りに帰郷しようとしている女中に、祭りを理由に同行する武将に驚愕だ。
しかも幸村が甘味屋を見つけては走り出すため、宿まで辿り着けなくて野宿する始末。
「源次様」
「……」
お忍びの旅行のため、一応有名な武将である幸村の名は下手に呼べない。
だからあまり知られていない方の源次郎の名からとって、源次と呼ぶと言ってあったはずだが、案の定反応はない。
「……弁丸様」
「なっ……!」
反応がないことは予想出来たため、最初は幼名である弁丸と呼ぶと言ったのだ。
それを拒否したのは、幸村本人。
結局最終的には幼名を呟くのだが。
「お願いだからもう、駆け出さないでくださいね。お陰で宿に辿り着けなそうですし」
「辿り着けないとは?」
「野宿だってさ」
幸村の質問に答えたのは佐助。
は呆れ返っているのに比べ、佐助は野宿にも慣れているのか、これにも楽しそうに笑顔を浮かべている。
「野宿する予定なんかなかったので、食料なんか持ってきてませんよ」
「え、そうなの?」
「そうですよ! なんで野宿前提なんですか!」
予想外にも、幸村より先に反応を示した佐助。
元は一人旅の予定だったのだ。
寄り道なんてする予定などなかったし、野宿の予定などあるはずがない。
そもそも女中が一人で野宿をしたところで、山賊にでも襲われて終わりだ。
「山の中になんか食べれそうなもの、あるんじゃない?」
……何を言い出すんだ、この忍は。
確かに忍はそうやって食料を調達してるのだろうが。
まずこの忍に問いたい。
なぜ楽しそうなんだ。
***
なんだかんだ幸村も楽しそうにしている。
山奥の斜面で。
てっきり佐助一人で行ってくれるものだと思っていたのに、幸村も行くと言い出した。
「女の子一人残っても危ないでしょ」
この一言でも言いくるめられた。
山に入ってからすごく後悔することにはなったが。
わざわざきつい斜面でも選んでるのではないかと思うほどに辛い。
「これ、残った方が安全だったような……」
「えー、そう?」
……確信犯だ。
がぶつぶつ文句を垂れている間に、いつの間にか幸村は、斜面を登り続けていた。
そしてその辺にあった、色とりどりの茸たちを次々とむしっていく。
積み上げられていく茸の大半は明らかに有毒。
「うわあ……」
若干引き気味のには気付くことなく、あろうことか、積み上げられた茸のうちの一つを口へ運ぼうとしている。
「ちょ、旦那! 待って! その茸は……」
ギリギリ口に入れる直前で茸を持つ手は止められた。
「どうした、佐助。この茸を食いたいのか」
その言葉に2人は、重い溜め息が漏れる。
そしてそれ以上幸村を咎めることが出来なかった。
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***
何この問題児たち。
100810