「お前エースのこと好きなのか?」


そのサッチの言葉がすべての引き金だった。

そんなこと考えたこともなかったのだ。
恋愛対象だとかそういう目線で一切見てなかった。
でも意識したら全ておしまい。

好きなんだ、と。

サッチには曖昧に返事を返したが、もうの中では確信に近かった。
恋なんて二十年近く生きてきた中で一度だってしたことがなかったのだ。

意識してしまってからはどうしていいか分からず、自然にエースを避ける形になってしまっている。
しばらくエースに会っていないにも関わらず、の頭の仲は常にエースのことでいっぱいで、しかもそれはネガティブなものばかりで。
エースはナースとかが好みなんだろうな、だとかそういう目で見てないんだろうな、とか。
そんなことばかり考えるものだから、余計にエースと顔を合わせたくなってしまった。

でも、運が良いのか悪いのか。
今夜は宴らしい。
宴といえば、嫌でも顔を合わせてう可能性が高まる。


(今回は出ないにしよう……)


体調が悪いふりでもして自室で寝ていよう。
顔を合わせない期間が開けば開くほど、気まずくなることは分かっているのだが、避けれるだけ避けたい。

以前は本当に毎日のように会話して、軽い口喧嘩なんてしょっちゅうで。
だから今回もちょっと大きな喧嘩だと思い込んだ者が多く、早く仲直りしろよー、なんて会うたびに声をかけてくる者もいる。


「マルコごめん、今日パス」
「おい、エースが……」
「おやすみ、楽しんでね」


マルコに一方的に宴の不参加を告げ、何か言ってるのも無視しては部屋に戻った。


「マルコ、は……」
「宴は参加しないってよい」
「……チッ」
「今なら部屋にいるよい」
「いい」


拗ねてどこかに行ってしまったエースに、二人とも素直じゃない、とマルコは一人零した。




***




外が騒がしいせいか、眠りにはついたものの、それは浅いものだった。
だからドアが開いた音ですぐに起きた。

ノックさえしないでドアが開くなど何事だろう。
部屋が真っ暗なせいで、部屋に入ってきた人物が見えない。


「誰?」


とりあえずベッドから体を起こしてみるものの、影が見えるだけで誰か分からない。
問い掛けた質問の返事さえも返って来なくて、不信感ばかりが増す。

一言も発さないままその人物はどんどんとに迫ってくるが、なぜか懐かしいその雰囲気に逃げ出そうとは思わなかった。


「エース……?」


すぐ近くまで迫ってきてやっと顔が見えた。
依然エースは一言も発すことがないまま、の肩を掴んで押し倒す形に。


「ちょっ……エース! どうしたの? 酒くさ……」


の問いにエースが答えることはなく、その代わりに唇が迫ってくる。
止める暇もなくの唇に伝わる暖かい感触。

一瞬何が起こっているか理解できなかったが、僅かな隙間から無理矢理エースの舌が入りこんできたところでやっと理解が追いついた。
でもエースの強い力で押さえつけられていたら、女のでは敵わない。
強いアルコールの香りのせいか、その行為のせいか、頭がクラクラしてくる。


「……んっ…」


次第に息苦しくなってきて、つい声が漏れる。
やっと離れたと思ったらそのまま覆いかぶさって来て、そのまま動かない。


「どうしたの、エース。重いよ」
「……なんで避けんだよ」
「それは……」


の耳元で喋るエース。
少しくすぐったい。


「避けんなよ」


すごく強いはずのエースが弱々しく言うものだから、すごく罪悪感に狩られる。

久しぶりに会話したはずなのに、そうは感じない。
やっぱり好きだなぁ、と思う。


が好きなんだよ、だから避けんな」


酒のせいか、あまり回っていない滑舌。
うわ言のように紡がれた言葉があまりにも予想外で、何も返せなくなってしまった。


(今、好きって言った?)


いつの間にか首の後ろに腕が回されているし、とエースの距離は完全にゼロ距離だ。
そのことに気付いた途端に、心臓が大きく、かつ速く鳴りだした。


「……嫌いになんないでくれよ」
「き、嫌いになんてなんない!」


放心してたがそこだけ即答した。
でもその先の言葉が出てこなくて、また黙ってしまう。


「じゃあなんで避けてたんだよ」
「…………好きだから」
「は?」


この距離で言ってるのだから聞こえないことはないだろう。
何回も好き、と言うなど、これ以上に恥ずかしいことはない。


「わたしも、好き……好き、だから、顔を合わせるのが恥ずかしかったの!」
「なんだよそれ……」


呆れたように言ったエースは、心なしか安心したように微笑んでいる。


「よかった」


そう言うなりエースの腕が強く絞めてきて、ただでさえ上に乗られているというだけで苦しいのに、更に苦しい。

苦しい。
そう発する前に、唇を再び塞がれた。
今度は触れるだけで離れてたその行為。

至近距離でエースと目が合って、なんだか気恥ずかしい。
こちらは火照る顔を隠したくてしょうがないというのに、エースは満面の笑み。
少し悔しいけど、この太陽と比喩するのが一番近いその笑顔が大好き。




(エース、お酒臭い……どいて)
(嫌だ! 絶対嫌だ!)




***
とっさに思いついたものを

120918


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