009













久しぶりに剣を振った。
前より幾分か重い気がしたが、長い時間振っていたら、段々と気にならなくなった。


「シャワー浴びよう」


先程シャワー室の場所は教えてもらった。
教えてくれたときのローの顔が、少し不機嫌で恐かったから、すぐに覚えた。

思い出したら沈む。


(怒らせちゃった……)


謝るしかない。
そう思っても、中々足が進まない。
逃げていても、着替えを取りに行くために、部屋に一度戻らなきゃならない。


(……嫌われてたらどうしよう)


どうしようもないくらいに、怖い。


(また一人になるのかな……もう一人は嫌だよ……)


ネガティブな考えばかりが頭の中を巡り、泣きそうになる。
そうこうしてるうちに、目の前には船長室の扉がある。

ドアノブを握るまではした。
そこから先は、体が動いてくれない。


「どうした」


しばらくドアの前で固まっていたら、中からローの声が聞こえてきた。
その声にびくりとしてしまう。
もしかしたら中に誰かいるのか、と思ったとき、突然ドアが開いた。


「なんで入ってこないんだ」
「え、いや、その……」


の様子がおかしいことには気付いたが、その理由の見当が全くつかず、自然と眉間に皺がよってしまう。
そのローの表情を、は怒っていると勘違いして、泣きそうになる。


「あの…っ…ごめんなさい……!」


何について謝っているのかは、ローには全く分からなかったが、の必死で謝る姿は、何かに怯えているように見えた。


「……とりあえず中に入れ」


ぽふっ、と頭の上に手を乗せて、部屋の中に入るよう言うと、驚いたように涙目で見上げて来た。


「どうした?」


を部屋に入れてソファーに座らせる。
そして自分もその隣に座る。

一通り、が謝ってきた原因は考えたが、ローの中にはその答えはなかった。
だから単刀直入に聞いてみたのだが、俯いたきり顔を上げてくれそうにもない。


「言わなきゃわかんねぇ」


そう言って、手での顔を包んで、目を合わせさせる。
は目にたっぷりと涙を溜め込んでいて、自分で上げさせておきながら、少し焦ってしまう。


「私、を…嫌いに、なら…ないで……」


堪えきれずにの目からは、次から次へと涙が溢れてくる。
それを親指で拭ってやる。


「どうしてそう思った?」


昼まであれだけ明るくしてたんだ。
何かきっかけがあったのだろう。


「…キャプ、テン…怒ってた、から」
「怒ってた?」
「…わ、私が、道…覚え、なくて」


あぁ、となんとなく分かった。

確かにの物覚えの悪さには呆れたが、別に怒っていた訳じゃない。

無愛想からか、不機嫌に見られることは多々ある。
それにしても、この勘違いは異常すぎではないか。


、よく聞け。俺がお前を嫌いになることはない。他のクルーも同じだ」
「……本当、ですか?」
「あぁ。だからそんなに気遣うな」


それでもまだ不安そうなに、頭を撫でてやる。
それだけで少し安心したようで、乱暴に涙を拭って、シャワーを浴びてくる、と言ってバタバタと出ていってしまった。


(…どうしたものかな)


ローの考えていた以上に、は村で酷い扱いを受けていたのかもしれない。
恐らくそれらが、も気付かないうちに、を深く傷つけていたのだろう。




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***
ネガティブなヒロインちゃん。

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