「島が見えたぞー!」
021
そうやって見張り番のクルーが叫べば、船内は歓声で溢れた。
軽く食糧難に陥る程度にしばらく島に出会えなかったのだから、普通の反応だろう。
島に出会えないどころか、敵船にも遭遇しなかったのだ。
クルーたちのストレスは溜まりに溜まっていた。
もそれは例外でなく、うきうきといった様子で海の先を眺めている。
見張り台からは見えてもまだ船からは見えないらしく、一生懸命背伸びをして島を探すの様子がとても微笑ましい。
「島が楽しみか」
「はい!」
笑顔で即答するに、問い掛けたローの方まで頬が緩んでしまう。
「いつ着きます?」
「後2時間もあれば着く」
「じゃあ今のうちに着替えておきます!」
今から島に降りる支度をバタバタとしてたら、かなり時間があまるだろう。
また同じ場所で島を眺めながら、ソワソワと上陸を待つ様子が容易に想像できて面白い。
しかししばらくして支度を終えてやってきたは、上陸する島を見て固まってしまった。
「キャ、キャプテン! わたしやっぱりちょっと体調良くないので船に残ります!」
まだ島にもついていないのに、それだけ言って船内に戻って行ってしまった。
の様子から考えられる可能性は一つしかない。
なぜよりによってたくさんある島々の中でこの島をログポースが指しているのだろう。
にとってはどうやら遠回りをしてこの島に戻ってきてしまったらしい。
でもほぼ身一つで島を飛び出したにとって、ある意味ではいい機会かもしれない。
「……おい」
さっきまではしゃいでいた姿はどこへやら。
今は布団にくるまって丸くなっている。
あくまでも寝た振りを通すのか、返事はない。
には珍しい反応にローは少し眉を顰める。
「降りたくねぇか?」
「……こわいです」
狸寝入りを通されるかと思ったが、予想外にも返事は返ってきた。
「キャプテンに拾われて、みんな良くしてくれて、久しぶりに居場所ができて、何かドジっても誰も見放す人はいなくて、みんな優しくて……島でのこと、思い出すと、怖いんです」
「…………」
「昔は島の人たちだって優しかったんです。それを思い出すと、船のみんなもいつか離れていくんじゃないかって。そんなこと絶対ないって、分かってるのに……っ」
ローからの表情は見えないが、声から涙してるのが分かる。
「いくら島を出るつもりでも持って来たかったものの一つでもあっただろ」
「ないって言ったら嘘になります。でも、残っている保障はありませんし、島民にも海軍にもわたしは顔が割れてます。下手したら懸賞金も僅かながらついているかもしれません。キャプテンはともかく、他の人たちはつなぎを脱げば問題ない」
自分が行ったら迷惑になる、とそう言いたいのだろう。
「俺と一緒なら問題ないんだろ」
それにあいつらもつなぎを脱ぐ気はねーよ、と不敵な笑みを浮かべるローは、恐らく引きずってでもを連れていくだろう。
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120916