「お前、トラファルガー・ローだな!」











023













「だったらどうする?」
「だから言ったのに……」


今すぐ船に逃げ帰りたいと思うを余所に、ローは隣でいつもの不敵な笑みを浮かべている。

はますますキャスケット帽を深く被り、ローの陰へと隠れた。


「離れるなよ」
「え」


頭上で“ROOM”と聞こえたかと思うと、剣を抜く音が耳に通る。
一瞬で言葉通り目の前の海軍たちはバラバラに。

敵だったらと考えると身震いがする。

次に聞こえた“シャンブルス”という言葉で、人間の体の構造をまったく無視した人体が出来上がった。
何度見ても気味が悪い。


「どうするんですか、こんなに騒ぎ大きくして……」


みんな久しぶりの島、楽しみにしてたのに、もう島に留まれないじゃないか。
呆れる、以外の言葉が出てこない。

でもこの頭の良い船長のことだ。
きっと何か考えているんだろう。


「お、お前……!」
「…………っ!」


久しぶりに見た顔、聞いた声に、思わず息を飲んだ。


「こいつか」


の様子で相手が誰だか、ローも察したらしい。
トラウマの根源である海軍少佐を目の前にして、はローのパーカーを強く握りしめている。


「あいつも他の奴らみたいにするか?」
「……いい、です」


何かを決意したように言い、手を離すに、ローは満足気に笑う。

一度深呼吸し、ローの隣からは姿を消した。
少佐の目からはそう見えた。

次に彼の目がを捕えられたのは、刃を喉元に突き付けられてから。

今までお互いの滑稽な姿を見て、あーだこーだ言っていた海軍兵まで皆。


(……どうしよう)


周りを圧倒した張本人は、勢いに任せただけであって、何かを考えていたわけではなかった。

でも、長いこと過ごした島の平穏を取り戻すチャンスだと、そう思ったのだ。
表向きには平和であっても、どこか怯えながら暮らさなければならない、そんな呪縛から解放できる。


「あなた専用の電伝虫、持ってるでしょ。出して」


小刻みに震えながらホルダーに伸びる手を見て、刀で薄皮を一枚斬れば、大人しく指示されたものを取りだした。


「海軍本部に今から私が言う言葉を、一字一句違わず伝えて」


力強くその姿に似合わない声で命令する。
少佐は言葉を発することさえも出来ずに、ただ頷くだけ。


「私はこの島に赴任してから職権の乱用を繰り返し、更には罪のない民間人を殺めました。よって本日付で軍を辞職します」
「…………」
「早く」


返事をすることはなく、無言で電伝虫を繋ぐ。

プルプルプル……といった無機質な呼び出し音の後、事務的な言葉が聞こえてきた。
確かに海軍本部に繋がったことを確認して、肌が斬れない程度に刀を押しつけることで先ほどと同じ言葉を促す。




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120926