024
声を震わせながらも、確実に言った通りの言葉を紡ぎ始める。
「わた、しは……この島に赴任し、職権乱用を繰り返し、罪のない民間人を殺めました。よって本日付で軍を辞職します」
「後で私が殺害した民間人のリストを送ります」
電話の向こう側には聞こえないように小声で伝えると、戸惑いながらも確実に復唱する。
電伝虫を切ったあとの、少佐のこの世の終わりのような顔を見届けてから、その辺の適当な海兵に後で被害者のリストを送るように告げた。
もちろん送らなかったときの脅し文句も加えて。
「終わったか」
「はい。おまたせしました」
「帰るぞ」
「はい」
至っていつも通りのロー。
いつの間にか奇形と化していた海兵たちも元通りになっていたが、船に戻ろうとするローと●を追おうとする者はなかった。
***
「あっ!大丈夫だった?」
街の騒ぎは船にまで伝わってなかったらしく、留守番させられていたベポが心配そうに聞いてきた。
「うん、もう大丈夫。シャチとかは帰ってる?」
「皆帰ってきてるよ。島で何かあったの?」
どうやら他のクルーは騒ぎに巻き込まれることも、海兵に見つかることもなかったらしく、安心する。
「ちょっとね。帽子返さなきゃ!」
空元気にも見えるの様子。
もちろんその様子にローが気付かないわけがなかった。
「」
「ん?」
「この島に残りたいか」
一瞬驚いたような表情が見えたが、迷いのない返答が返ってきた。
「昔のような暮らしに戻れるなら、ちょっと戻りたいかもしれないです。でももう両親はこの島にいても帰って来ないですし、島の人たちだって昔のように戻ってくれるとは思えません。それに、今わたしが一番いたいのはこの船です」
「そうか」
少し寂しそうではあったが、しっかりとした返事。
近くで不安そうに聞いていたベポも安堵の表情に変わっていた。
「じゃあシャチのところ行ってくるね!」
「あぁ。それとペンギンに出港準備だと伝えてくれ」
「はい!」
折角の島なのに一日経たずして出港すると言ったら、渋る者も出るだろう。
しかしもうログもたまったし、何より海軍に顔が割れてる。
できるだけ早く島を出るのが懸命だ。
「シャチー、帽子ありがとう!」
「おー、。見つかんなかったか?」
「うん、見つかった」
「やっぱりあの騒ぎはお前らか……」
騒ぎを見た者はいなかったらしいが、どうやらみんななんとなく察してるらしい。
そりゃあ海兵とあんなに派手に騒ぎを起こしたのだから当たり前だろうけど。
「大丈夫だったか?」
「もう大丈夫。ありがとう」
「大人になったなぁー……」
今まで真面目に心配してくれていたと思ったら、突然しみじみと頭を撫でてきたシャチ。
本気で感謝していたのに子供扱いか、と手を払い除けてキッと睨みつけてやった。
あぁ、この顔は全く怖くないと思ってる顔だ。
「シャチのバカ!」
「そいつの馬鹿は今に始まったことじゃないだろ」
「そうだった」
突如会話に割りこんできたペンギンは、ひどい!と非難するシャチを無視して話を続ける。
「家から何か持って来れたか」
「両親の写真だけ。他にほしいものもなかったの」
「そうか、よかったな」
それだけかだとか、いいのかだとか、そんなことは一言も言わなかった。
たぶんこの人は人の気持ちがよく読みとれる人なんだ、と妙に納得してしまう。
「あ、そうだ!キャプテンが出港するって!」
「あぁ、分かった」
任務は完了した、という面持ちでもう一度シャチからプイッと顔を背けて、両親の写真でも見せよう、と船長室に向かう。
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***
お久しぶりです。
130319