夏の大会前。
必然的に練習がきつくなってきた頃。
もちろん気温もどんどん上がっている。
あまりにもカラッとグラウンドが干上がってるものだから、選手たちの休憩の間に、マネージャーは水を撒くように監督から命じられた。
ホースで水を撒き始めたを見て、利央は犬のように自分から水に向かっていく。
「風邪ひくよー」
「すぐ乾くんで大丈夫っす!」
そんなやり取りを終え、一通り水浴びを済ませた利央は、の持っているホースを奪ってめちゃくちゃに水撒きを始めた。
利央が何かを考えてそんなことをするはずもなく、すぐには頭から水を浴びせられた。
「……利央」
「わ、わざとじゃないです!」
「当たり前!」
とりあえず一発殴らせろ、と利央に近寄るも、すぐには固まった。
「ごちそうさまです」
声の正体は変態で有名な島崎慎吾先輩。
その言葉を聞いて、反射で胸を隠すも、濡れたワイシャツの前には、そんな行為は無意味だった。
体操着を忘れた、という理由で制服のままマネジ業をやっていたため、下はジャージがある。
だがこの季節、上のジャージを持っているはずがない。
持っていたとしてもその下に着る服がない。
どうしよう、どうしようと固まっているの視界が突然暗くなった。
どうやらタオルが頭から被せられたらしい。
視界を遮ったタオルを退けると、いつもよりいくらか不機嫌な準太が目に入った。
背中からは準太のものと思われるアンダーがかけられ、そのまま手を引かれて連行される形に。
向かっていたのは部室だったらしく、入った瞬間乱暴に扉が閉められた。
「準太?」
「なんでこうお前は……はぁ……」
「えっ、何それ」
怒っていたかと思っていたら、呆れられた。
意味がわからない。
そう思ったのがそのまま顔に出てたらしい。
いつの間にか背後には壁、前方には準太、そして両脇の準太の腕に退路を塞がれていた。
「透けてるワイシャツって男はからしたら最高なの」
ご丁寧に耳元で囁いてくれて、不機嫌の理由が十分理解できた。
「でもあれは利央が……」
「あー、はいはい。教室から俺のジャージ取ってくるから、それに着替えとけ」
「はーい。あ、下はある」
適当に返事を返して準太は出ていった。
彼のことだからすぐに戻ってくるだろう。
戻ってくるまでに言われた通り、準太のアンダーと自分のジャージに着替えなければ。
後で利央を絞めて、慎吾先輩に文句言って……と考えながら着替えを済ませたら、すぐに準太は戻ってきた。
ほらよ、と乱暴にジャージを渡され、それに腕を通す。
「あ!」
「ん?」
「準太の匂い」
サイズの合っていないジャージの袖を嗅ぐと、落ち着く香り。
毎日このジャージを着たいかもしれない。
「……でも暑い。脱いでいい?」
「だーめ。今日は我慢しろ」
「なんでー」
「だめだから」
「意味わかんない……」
「ほら、腕まくれ」
脱ぎたい脱ぎたい、と駄々をこねるの袖を準太が捲ってやる。
(アンダーだけだと胸が目立つ……)
男ばかりのところにそんな格好でいてほしくない。
いやでもぶかぶかのジャージもなかなか。
心配性な香り
(……なんでお前ジャージ持ってないの)
(だって使わないし……むしろなんで準太は持ってるの?)
(ずっと置いてある)
(えー! いつから?)
(一ヶ月くらい前)
(……持って帰ろうよ)
(今日な)
(やっぱ脱ぐ)
(だー! 駄目駄目!)
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準太くんはガサツだといい。
120929
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