と佐助は、と共に山奥の甘味処を目指していた。

事の発端は、主の怪しい言葉。


「佐助ぇえ!」


ものすごい勢いで駆け寄ってくる主は、心無しか目を輝かせた子犬に見える。


「どうしたの、旦那。大将に高級な団子でも貰った?」


さらっと失礼なことを言ったようにも思えるが、いつもの幸村ならば図星。


「いや、お館様が美味い茶屋を教えてくださった故、と買ってきてくれ!」
「は? 俺一人行った方が早……」
「では、頼んだぞ!」


佐助の言葉は見事に遮られ、幸村は走り去ってしまった。
あっという間の出来事に、佐助はつい唖然としてしまう。

何を企んでいるかは分からないが、命令に背くわけにはいかず、冒頭に至る。


「なんか、こうして2人出掛けるの、久しぶりだね」
「そうですね」


そう言って俯いたの頬は、密かに赤らんでいた。


「しかしなんでまた旦那は、こんな山奥の茶屋、俺ら二人で来させたんだか」
「本当ですよね」


運動量の少ないにとって、決して楽な道のりではなかったが、とても幸せだった。
終始手を握っていてくれる忍装束ではない彼は、自然と歩幅を合わせてくれている。
そんな小さな気遣いさえ、嬉しく思えた。

しかし1歩前を歩いていた彼が突然立ち止まった。


「佐助さん、どうしたんです?」
「静かに!」


そう言った佐助の表情は、見たこともないもので、少しばかり恐怖を覚える。

その時、左右の林から山賊と思われる男が十人ほど飛び出てきた。
男たちの手には刀が握られていて、その刀を真っ直ぐと二人に降り下ろそうとしている。

しかし佐助はを抱え、容易にそれを避ける。


「佐助さ……」
「はいはい、そこで見てなさいって」


佐助はを安全なところに降ろし、笑顔でそう言った。
そしてあっという間に全ての山賊を気絶させてしまう。

普段なら迷わず殺してしまうところだが、の前ではそうはいかなかった。


「ほら、終わったよ。さっさと用事済ませちゃお」


そんな佐助の言葉も聞こえないのか、は一向に動こうとしない。


「あ、あの、佐助さん!」
「ん、どうした?」
「すみませんでした!」


今にも泣き出しそうな声で謝る
その様子に、佐助は疑問符を飛ばすことしか出来なかった。


「私が、我が儘を言ったから……っ……!」
「へ?」


予想外の言葉に、思わず間抜けな声が出てしまう。


「今日のこと、私がお願いしたんです。幸村様に」
「あ、あぁ」


成る程、と納得する。
だからあんなに目を輝かせていたのか、あの主は。


「申し訳ございません!」


尚も涙を堪えながら謝るを見て、思わず笑みが零れる。


「嬉しいこと言ってくれるねー」
「え?」
「謝ることなんかないよ。ちゃんも、俺様だって怪我一つない。」


寧ろ俺様がお礼を言いたいくらい、と続ける。

その言葉に、は思わずきょとんとしてしまう。


「お礼なんて言われるようなこと、私……」
「いーや、してる! ごめんね、ずっと寂しい思いさせて」


は、その言葉がよっぽど嬉しかったのか、それまで堪えていた涙が一気に溢れる。


「ほーら、泣かない! もう茶屋もすぐそこだから」
「はいっ!」


目尻に涙を残しながらも、笑顔で答えるは本当に幸せそうだった。




←back  ★→


***
あれ、もっと長くなる予定だったのに。
でも丁度良いくらいかな。

無駄に執筆したおまけも是非どうぞ。
後日談ではなく、その後みたいな。


090821