が鍛錬場を訪れた2日後に戦は終わった。

一足先に帰還したのは忍。
土産は勝利の報告。
そして軍が帰還するという報告。






A Time . -12-






戦をしたからには怪我は常。
先に帰還した佐助によれば、怪我人は少なくはないという。
少なからず死者も出たらしい。

その報告を聞いて、少し俯いただったが、すぐに立ち直る。
戦とはそういうことだから。

そうやって、自分を納得させて。

戦の後は医者の手が回らなくなるので、女中も怪我人の手当てをするらしい。
簡単な怪我だけを。

見れば、そのことをに言った佐助も、あちこち服が裂け、血がにじんでいる。


「佐助さんも怪我……」
「あー、掠り傷だよ」


現代で、戦なんて程遠い生活をしていたにとって、怪我なんてすることも見ることもあまりない。
そんなにとっては、掠り傷でさえ痛々しく見える。

しかし佐助の方は平然としていて、何事もなかったようにしている。


「大丈夫、自分で手当てできるから」


心配そうにしているにそれだけ言って、佐助はどこかに行ってしまった。

あっという間に消えてしまった佐助に、は何も言うことができずにいたところに、他の女中が軍が到着したことを知らせてくれた。
そしてそれを聞いたは、急いで門へと向かう。

門で1番初めに目に入ったのは、信玄。
そして幸村。
後ろに続く武士も皆、あちこちに怪我を負っている様子だったが、晴れ晴れとした表情をしていた。

先程の佐助といい、痛くないのか。
そう思ったが、いちいち痛がっていたら武士など務まらないのだろう、と思いなおす。

重傷者は次々と広間らしき部屋に運ばれていく中、は軽傷者の手当てを始める。

そんな時、1人の女中が困惑した様子でのところにやって来た。


さん、幸村様の手当てに行ってくださいませんか? こちらは私がやりますので」


聞けば、手当てをしようとすると、破廉恥を連呼されて手当てをさせてもらえないらしい。
そこそこ怪我が多いのに拒否されて困っているという。
身分が高いこともあり、手当てをしなければいけないのだが。


「え、何で私が……」
「この前幸村様を手懐けたと聞きましたので」


この前とは侍女を不本意にもやらされた時か。
手懐けた覚えはないが。

まるで幸村をペットの様に言っている女中の言葉に、は戸惑うばかり。


「とりあえず行ってください!」
「あ、はい」


なぜ自分なのか、納得しきれなかったが、押しに負け、幸村の手当てへと向かう。




***




「幸村様、お怪我の手当てに参りました」
殿か、手当ては良いと先程の女中にも……」
「手当てさせていただかないと、私たちが困るんです!」


ほとんど先程、押しに負けた八つ当たり。
しかし幸村も押しに弱いようで、うぅ、と唸る。

内心ガッツポーズで無理矢理手当てを始めると、みるみるうちに幸村は赤面していく。
嗚呼、またか、と思っていると、後ろからからかいの声が。


「お、旦那、いいねー。女の子に手当てなんかしてもらっちゃってー」
「佐助! は、は、破廉恥でござるぅうう!!」


佐助の言葉でついに何かの糸が切れた幸村は、手当ての途中にも関わらずどこかに走り去ってしまった。


「ちょ、幸村様! まだ途中!」


呼び止めようにも、最後まで言い終わる頃にはもう視界には幸村はいなかった。
それに溜め息を漏らし、佐助を軽く睨みつける。


「からかわないでくださいよ! 私頼まれて来てたんですから」
「旦那、ちゃんは赤くなりながらも拒否しないもんねー。旦那が女の子に手当てしてもらってるの初めて見たし」


そりゃ頼まれるわ、と言っているうちに、先程まで睨んでいたが、いつの間にかきょとんとしている。


「え、幸村様って女中さんが手当てしてるんじゃないんですか?」
「いーや、いつもは俺様がしてる」


これはこの子もいけるな、とをからかいに入る。


「旦那、実はちゃんに惚れてるんじゃない? あんなに赤くなりながらも我慢してるなんてー」


『惚れてる』という言葉を聞いた瞬間、の顔面は先程の幸村と同様のものになった。
そして突然立ち上がり、挙動不審に。


「あ、わ、私、幸村様探して来ます!」


それだけ言い、あっという間に立ち去ってしまった。

そしてその後、佐助が幸村を探しに行けば、再び顔面を真っ赤に染めて顔を背け合っている2人を見つけた。
様子からすると、出会い頭に軽くぶつかったのだろう。

そんな微笑ましい2人を再びからかう佐助だった。




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***
もう、なんなんだこれは。
ヒロインのキャラがぶれまくってる。

ヒロインが幸村と同じタイミングで赤面しないのは、単に男を意識しないから。
でも意識し始めるとすぐ赤面。


090829
100117 修正