純粋で熱い主は会いたくないときでも、子犬のように出迎えてくれる。

むしろ会いたくないときの方が出迎えの頻度が高い気もしてきたり。






A Time . -02-






案の定、まず出迎えてくれたのは、佐助の主である幸村。
正直今1番会いたくない人物。


「佐助ぇー! やっと戻った、か……」


語尾が段々とゆっくりになると同時に、徐々に顔が林檎のように染まっていく主。
見事に予想通りの反応を示してくれる主を見て、思わず耳を塞ぎそうになったが、そうもいかず、


「はははは破廉恥な! そそその女子は…な何者か!」


正直、耳が痛い。

戦国時代は、ほとんどの女性が着物姿で、露出は少ない。
それに比べ腕の中の少女は、着物に比べ露出の多い見たこともない服装。
幸村のことをよく知る佐助なら、この反応は容易に予想できた。


「あー、はいはい。とりあえず後で報告するから……」


叫ぶ主は放っておき、とっとと1番奥の空き部屋に少女を寝かす。
そして正体不明のこの少女を放って行くのも気が引けたが、いつまでも任務の報告をしなければいけない。

主を探しに行こうかと立ち上がったが、聞こえてきた爆音がその必要がないことを伝える。
軽く溜め息を零し、爆音へと向かう。




***




甲斐名物、殴り合いは、まだ始めたばかりらしく、終わる気配がない。
いつものことなのだが、今日ばかりはいつまでも終わるのを待っていられらない。


「あのー、報告いいですか?」
「おぉー佐助か」


そう言った甲斐の領主、信玄は額に汗を光らせ、吹っ飛んだ幸村の方向に拳を突き出した体制。
そんな光景に驚く心はかなり昔に置いてきたが、呆れることだけはいつまでたっても変わらない。


「えーと、とりあえず領内に異常はなかったのですが……」


なんか言いにくいなー、と思いながらも続ける。


「怪しいというか……不自然な少女を保護しました」
「不自然とは?」
「見たこともない服装で、何やら挙動不審で……」


佐助自身まだ彼女の正体を全然把握していないので、うまくは説明できなかったが、追って報告をすると付け加え、報告を終えた。
そして佐助は、再び始まった殴り愛から逃げるように部屋を出、少女の元へ向かう。

起きていてくれたら嬉しいなー、とか呟いてみたが、少女は未だ深い眠りの中にいた。
「まだまだ起きないか……」


なんで連れてきちゃったんだろう、なんて思ってみるが、最終的に行きつくところは自業自得だった。




***




突然目が覚め、起き上がってみたけれど、そこは全く見たこともない部屋だった。

眠る前の出来事も思い出せず、きょろきょろ周りを見渡してみれば、見覚えのある迷彩が目に入る。
目に見えて身体を強張らせるに、の記憶とは違った少し優しい声音で忍は話す。


「あー、さっきはごめんね。お腹空いてるでしょ? お粥持ってくる」


そう言って部屋を出ていった忍は、すぐに戻ってきた。

そしての目の前に、ほかほかと湯気の立つお粥を置く。


「え、と……」
「どうぞ。太らせて食べようなんて思ってないから」
「や、そうじゃなくて……」
「もちろんまだ聞きたいことはいくらでもあるけど、また倒れられても困るから」


初対面のときよりは随分良いにしても、まだ充分に刺のある言葉に怯みながらも、箸を手に取る。


「いただきます」


久しぶりの食事だったので、ゆっくりだったが、しっかりと完食した。


「じゃー、早速聞くけど、何者? 全部話して」


自身でさえ、分からないことだらけだったが、知っていることは全て話した。

目が覚めたら、見知らぬ場所にいたこと。
目が覚める前の記憶ははっきりとはないこと。
死体の山を見て吐き気を覚え、近くの森へと走ったこと。
そして何日も飲まず食わずができず、眠りもできないでいたところに目の前の忍が現れたこと。


「なるほどねー。まあ、曖昧だけど悪意は無さそうだし…名前は?」
です」
「俺様、猿飛佐助。てか、あれ、お姫様?」


……そうは見えないけど、と小声で続ける。


「え、いや、お姫様なんて滅相もない……」
「ふーん……まあ、いいや。とりあえず同じことを大将にも話してもらうよ」
「あの、大将って……?」
「ん、あー……この甲斐の領主、武田信玄様。通称お館様」


武田信玄。
名前だけは知っている。
何を成し遂げたかまでは知らないが、現在では偉人として伝えられているはずの名前。

しかし目の前の佐助と名乗る忍は、信玄の名を存在する人物として口にしている。

同姓同名なのだろうか。
いや、今時そんな名前……。
よくよく考えれば、信玄だけではない。
あの死体の山も、のいた時代とは考えられない。


「あの……」


ここと私のいたところでは、時代が違うかもしれません。

そう切り出そうとしたが、そんな話信じる方がおかしいのではないか。
ましてや今自分は、命を握られていると言っても過言ではない。


「どうかした? 言っておくけど全部話してもらうからね」


の心の内を読んだかのような発言に、びくりとするも、誤魔化せないことを知り、詰まっていた言葉を吐き出す。


「んー、なるほどねー」


信じてもらえたかは分からないが、とりあえずこの場は助かったらしい。

しかし信玄はもっと恐ろしいのだろうと思い、逃げ出したい気持ちになる。
じゃ、行こっか、と佐助に一言言われ、信玄の待つ部屋へとは連れていかれた。




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***
主人公はTシャツにショートパンツという服装。
大して露出も多くありませんが、初心な赤い人には刺激が強いかと。
破廉恥、言わせてやったなり。

そして戦国時代の女性はお姫様くらいしか苗字を持たなかったという知識が間違っていないか不安。

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