A Time . -22-






よ、人を殺す覚悟はあるか」


突然信玄に呼び出されたと思ったら、開口一番にかけられた言葉がそれ。
なんて残酷な人だろう。
でもその問いの答えが即答できるまでは、は戦場に出ることはできない。

人を殺す覚悟。
戦争さえもない日本で生活していたにとって、重いものだった。


「殺す覚悟、があるかは分かりません。でも、守りたい。わたしを受け入れてくれた女中さんたちや、甲斐をささえてくれてる農民の方たちを。守るためなら目の前の敵を迷いなく斬ります」


確かな覚悟を決めた目をするに、信玄の目は厳しいものから軟らかいものに変わる。


「十分」


てっきり、まだ戦には出せないとでも言われるかと思った。
予想外の返答にわずかに目を見開く

そして信玄は更にの想像を上回る発言をする。


「明後日、甲斐を発つ」
「それは……」
「戦じゃ。共に行くか?」
「……行かせてください」


急だったが、迷いはなかった。
戦に出た者たちを待つのは、不安で、不安で、もう堪えられる気がしない。


「何、さして大きい戦ではない。気楽に行くがよい」
「はい。ありがとうございます」


の覚悟を聞いておいて、気楽に行けとは無理な話である。
それでも気を使ってくれたのは確かだ。

失礼しました、と部屋を出れば、すぐそこには幸村がいた。
この場にいるということは、話の一部始終を聞かれていたのだろうか。


「幸村様?」


なんとも言い難い顔をする幸村。
やはり聞かれていたのか。


「本当に行くのでござるか、殿」
「はい」
「……そうか」


止められるかと思ったが、そうはならなかった。
止められても考えを変える気など、さらさらないが。

戦など、想像もつかない世界だ。
この時代に来てすぐに見たあの屍の山は思い出したくもない記憶。

でも知らないところで幸村や佐助が傷つく方が、ずっとずっと怖い。


(大丈夫、慣れる。慣れてみせる)




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***
もしかして2年ぶり



120908