何人かの女中さんに聞いて、やっとのことで着いた部屋の前。
その部屋の前で5分ほど固まっていたのは、以外知らない話。






A Time . -06-






幸村は、現代で言うデスクワークをこなしていると聞いた。
正直、似合わないと思ったが。

いざ幸村の部屋を目の前にすると、緊張する。
5分ほどその場で固まっていたが、やっとの思いで勇気を振り絞り、口を開く。


「失礼します、幸村様。でございます」


しかし襖の向こうからは、いくら待っても返事が返ってくることはない。


「幸村様?」


ここにはいないのだろうか、と考えているところで、道を聞いた女中に言われた言葉を思い出す。


「返事がなかったら、入ってしまって構わないのよ」


その言葉が何を意味するのかは分からないが、やはり迷う。
例え変人でも、偉い武将であるはずなのだが。
しかし入って構わないと言われたのだから大丈夫だろう、と思い直す。


「失礼します!」


思い切って勢いよく襖を開けると、そこには静かに寝息をたてている幸村が。
机にうつ伏せになって寝ているところを見ると、居眠りなのであろう。


(……起こした方が、いいんだよね……?)


「幸村様、幸村様、起きてください」


軽く肩を揺らし、起こそうと試みるも、なかなか起きてはくれない。


「幸村様」
「う……ん、」


一瞬起きたかと思ったが、まだ起きてはいないよう。
迷った挙句、大きく息を吸い込む。


「幸村様! 起きてください!」
「うおっ!?」


流石に怒鳴られれば起きるようで、幸村は文字通り飛び起きた。


「突然すみません。執務の途中のようでしたので」
「そうであった!」


すると、今までが佐助だと思い込んでいたのだろうか、いつもと違うことにやっと気づく。


「そ、そなたは……」
でございます。本日より暫し、幸村様の侍女を務めさせていただくことになりました」
「そ、そ、そうであるか! もう下がってよいぞ!」


先日のことを思い出したのか、例によって真っ赤に顔を染めてそう言う。
の方はというと、今日のはなぜなんだ、とは思ったが、そろそろ考えるのも面倒になった。


「では、失礼致します」


もしかしたら嫌われたのではないか、とも思ったが、下がれと言われたら下がるしかない。
部屋を後にすると、は小さく溜め息をつく。


「女中さんの手伝いでもして来よう……」




***




の思いとは裏腹に、幸村は頭を抱えていた。


「ぬぅー……殿に突然失礼なことをしてしまった……」


そういえば先日佐助が、自分がいない間、代わりに侍女をつけると言っていた。
怪しげな笑みを貼り付けて。
このことだったのか。

暫く唸り続ける幸村であった。




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***
毎回短い!
と言っている気がする。

そして今回も短い!
どうしたら長くなるのだろう。


090820
100117 修正