縁側で足を揺らしながら待っている幸村は、子供、もしくは子犬のように見えた。






A Time . -08-






この人、表情豊かだな。
素直にそう思った。

勇ましく見えたり、可愛らしく見えたり。
例えるならば、犬。
そう思えば、今まで変人だと思っていた行動も微笑ましい。


「幸村様、団子と茶をお持ちいたしました」
「おぉ!」


が持っている団子を見つけるなり、目を輝かせる。
そんなに好きなのか、団子が。
あまり気にしていなかったが、が持っている皿の上の団子は相当な数だ。

二人でこれを食べきれるのだろうか。
しかしそんな不安もすぐに打ち消された。

幸村の目の前に皿を置いた途端、驚く早さで団子の数が減っていく。
呆気に取られているうちに団子は姿を消していて、幸村はそのことに全く気付いていない。


(……自分から誘ったのに)


少し残念だったが、そこまで食べたかったわけでもないし、と開き直る。


「とても美味かったでござる!」
「そうですね」


食べてないので味など分からないが、とりあえず社交辞令。

しかし幸村は、心から幸せそうにしている。
団子を食べて和んだせいか、それともある程度慣れたせいか、幸村の緊張は既に解けている。


殿は不思議でござる」


突然紡がれたその言葉はには理解できるはずがなく。


「……何がです?」
「全てでござる。こちらにはない、何か温かい雰囲気を持っている」


返ってきた答えは、突拍子のないもの。


「以前、殿のいた時代は戦がないと言っていた。その所為なのか、とても温かい」
「そう……ですか?」
「そうでござる!」


なんかすごく嬉しいことを言われた気がする。
本人は無意識なのだろうが。


「こちらに来る前は何をしてたのでござるか?」
「高等学校というところで学業を営んでおりました。最近は部活を中心に活動していましたが。それ以外は何も」


なぜだろう。
それ以外は何も覚えていない。
自分が何をしていたかは覚えている。
しかし家族、友人、関わった全ての人のことが思い出せない。


「部活とは?」
「なんと例えたら良いのか分かりませんが、一つのことに熱心に打ち込むのです。仲間と共に」


そう、丁度引退直前だった。


「それはこちらと変わらないのだな!」


幸村は天下統一のことを言っているのだろう。

仲間と共に一つのことに打ち込む。
確かに同じだ。


「私は剣道といって、剣術の真似事をしていました」
「なんと! 剣術をやっていたのか!」
「所詮は真似事です。竹刀だけで、真剣など握ったことありませんし」


実際、戦の跡を見て怖気づいた。


「しかしそれほどに熱心に取り組んでいたのなら、もう一度竹刀を握りたいと思わぬか?」
「確かに思いますけど……」


あれほど毎日竹刀を握っていたんだ。
それがいきなりなくなるのは辛い。


「では着いてきてくだされ!」


それだけ言って、の腕を握るなり歩き出す。
そして少し後に自分の行為に赤面することになる。




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***
ヒロインの過去を少し。
幸村が問題児だ。


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