案外元服は早く、弁丸から幸村へ。
しかし呼び名が変わっただけで幸村が変わるはずもない。

そんな幸村だが、元服と同時に、父と同じく武田信玄公に仕えることになった。






-002-






「佐助ー! ー!」
「こらー、旦那、騒がないー」


そんなことを言われても幸村は、引っ越しだ、と騒ぎ続ける。
幸村は信玄に仕えることになったので、父・昌幸の治める上田城から躑躅ヶ埼館に引っ越すことになった。

必然的に、正式に幸村に仕えることになった佐助との2人も躑躅ヶ埼館へと移り住む。


「後1頭くらい馬、用意してくれてもいいのに……」


は躑躅ヶ埼館の道中、欠伸を漏らしながら、そんな愚痴を垂れる。
何故なら、3頭歩く馬の内1頭は幸村が、2頭は荷物運びのために使われていて、必然的にと佐助の2人は徒歩だから。
躑躅ヶ埼館までの距離がかなり遠いにも関わらず、だ。


「文句言わないの。忍なんだから当たり前でしょ」
「はーい」
「大丈夫でござる! お館様はとっても素晴らしいお方故」
「いや、そういうことじゃなくって……」


お館様――信玄にはだって何回か会っている。
確かに威厳があって凄い人だったが、今は全く関係ない話。

が深い溜め息をついているうちに、何故か突然幸村の馬が全力疾走を始め、みるみるうちに遠くに行ってしまった。


「ちょ、旦那!」
「どうしたんですか、あれ」
「知るわけないでしょ!」


本気で慌てる佐助と呑気な
真逆の反応を示した2人だったが、幸村の行き先を知って、同じ反応になった。

幸村が満面の笑みで向かっていたのは茶屋。
佐助は呆れていていたが、の方は佐助に気付かれぬよう、笑顔で茶屋に入っていく。

しかし佐助は遂に諦め、旦那ーあんまり頼まないでよー、と言うだけだった。
そんな佐助の言葉を、幸村が聞く筈もなく、すごい量の団子が積み上げられていく。

それに溜め息を漏らしつつ佐助は、お館様へのお土産、と何本かきっちり団子を包んでもらう。


「あ、は頼まないでよー」


佐助がの存在を思い出した時にはもう遅く、すでにの目の前には10本ほどの団子が。


「……半分どうですか?」


全てが遅かった。




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