2人――信玄と幸村――は何かに目覚めたらしく、暑苦しいやりとりを始めた。
なんでも前回会ったときに、信玄と幸村は恐ろしい程意気投合したらしい。
-003-
「……暑い」
恐らく殴り合っている2人の耳には聞こえていないが、佐助の耳には届いていたらしく、軽く睨まれた。
それを軽く無視して、溜め息をつく。
(ずっと正座して見ているこっちの身にもなってほしい……)
流石に声は出さなかったが、そんなことを思う。
暫くぼーっとしているうちに、2人とも満足したらしく、汗を光らせつつ腰を下ろした。
「ふぅー……長旅疲れたであろう。ゆっくり休むが良い」
「はい!」
幸村は目を輝かせてそう言うが、正直あの殴り合いをした後にそんなことを言われても説得力がない。
再び溜め息を零しそうになったとき、は大事な事を思い出した。
「あ、お館様」
「む、どうした」
突然喋り出したに、佐助はさっと振り返る。
その眼は鋭く光っていて、余計なことは言うな、とに語りかけていた。
「ここに、海野六郎という者がいるはずなのですが」
「おぉ、六郎と知り合いか」
「兄です。確認したかっただけですので」
それだけです、と早々に会話を打ち切った。
***
「へー、兄弟なんかいたんだ」
佐助にも初耳だったらしく、心の底から驚いている。
「はい。暫く会っていませんが」
「会いたかったんじゃないの?」
「ここにいるならいつか会えますよ」
「ふーん」
そんなに大人ぶらなくてもいいのに、と続ける佐助。
には聞こえないように呟いたつもりだったが、聞こえていたらしく、前を歩いていたが突然ばっ、と振り返った。
そしてただ、ふんっ、とだけ言って再び前を向いて歩き出す。
その行動に、やっぱり子供だったか、と思い直す。
「ん?」
突然背後で間抜けな声を発する佐助を、は振り返る。
「どうしたんです?」
「って、苗字あったんだ」
「今さらですか」
「だって言ってなかったじゃん」
「聞かれなかっただけです」
愛想のない言い方をするに、肩を落とす佐助。
(子供らしくしてれば可愛いのになー……)
今度はにバレないように、口には出さずにそう思った。
「あ!」
今度は何かを思い出したような佐助の声。
「今度はどうしたんです?」
いい加減呆れながらも、律儀に反応はする。
「お館様にお土産渡すの忘れてた」
あぁー、と道中に佐助が幸村の寄り道のついでにお館様へのお土産を買っていたのを思い出す。
「今から渡して来た方がいいんじゃないですか?」
「んー……後で旦那に内緒で食べない?」
どうせ食うのに夢中で買ってるの気づいてないだろうし、といたずらな笑みを浮かべる。
「珍しいですね」
「何が?」
「佐助さんからそんな事を言い出すなんて」
そう言いながらも、佐助の手にしている包みは気になるよう。
「じゃ、いらない?」
「食べます、勿論」
「素直でよろしい」
そう言って頭を撫でる佐助に、頬を膨らませるだったが、すぐに嬉しそうな笑顔になった。
勿論その笑顔は佐助へではなく、包みへだが。
***
「む、佐助、その包みはなんだ!」
「え、ちょ、旦那、なんでそんなに鼻が良いの!」
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