-006-
本軍が到着したころには、既に戦は荒れていた。
別動隊の安否を確かめようにも、本軍も早速加わり混戦していて不可能な状態。
戦の前線だというにも加わらず、いつまでもきょろきょろするに佐助が軽く拳骨を食らわせた。
「ボーっとしない。戦だよ」
「は、はい」
旦那よりタチ悪かったかな、とも思ったが、すぐに表情を引き締めるを見て、安心する。
実際はまだ心配でならなかったが、見つけたところで、叱られるだけだ。
心配されることを兄はきっと、望んではいない。
ましては初陣だ。
いつまでも余所見をしてたら自分が殺されてしまう。
よし、と自分だけに聞こえる声で掛け声をかけ、戦に加わる。
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は到底初陣とは思えない動きをしていた。
さすがに佐助ほど前線までは行かなかったが、忍が表に出て戦うことがまず珍しい。
初陣と知られれば、狙い打ちされることも多いが、忍特有の速さを活かして自分よりずっと体の大きい男たちを苦無で切り裂いていく姿を初陣とは思わないだろう。
そんな調子で戦は予想よりずっと早く終わり、武田軍の勝利に終わった。
勝利はしたが、死傷者は相当な数。
丁度信玄も参加しようとしたところで、戦は終わりを告げた。
それ程予定外の接戦だった。
は掠り傷があちこちにあるだけだが、周りを見渡せば、足を引きずっている足軽や無造作に転がっている屍が多数。
「ほら、戻るよ」
「あ、はい」
いつの間にか佐助が背後に立っていて、頭をくしゃりとされた。
***
陣に戻れば、あちこちで怪我の手当てをしているのが目に入る。
自分は手当てするほどでもないか、と手当ての手伝いに向かおうかとしたとき、後ろから突然腕を掴まれた。
驚いて振り返ってみれば、そこには心なしか涙目の幸村が。
そういえばこの主はいつもは1番に出迎えてくれるのに今日はそれがなかった。
「何かあったんですか?」
幸村はその言葉には答えなかった。
いつもはうるさいくらいの彼が無言を貫くとは……
こちらは訳もわからず不安になる。
近くにいた佐助に助けを求めるようとしたが、なぜか佐助も表情が硬い。
頼まれなくたっていつもは舌が回る2人がこうも黙るとこんなにも困るのか。
「……何か……」
「別動隊、全滅だって」
「え……?」
別働隊の全滅。
つまりはの兄や幸村の父の死を表す。
頭が真っ白になるって、こういうことなんだ、と感じた。
はしばらく固まっていたが、すぐに戻りを開く。
「わ、私、向こう手伝ってきますね」
その言葉には佐助も幸村も反応できず、は逃げるように手当ての手伝いに向かった。
そこでのは、よく笑っていた。
普段はあまり表情を見せず、笑わせようとしても難しいが、だ。
それこそ数年前は無邪気に笑っていた気がするのだが、忍の自覚なのか何なのか、日を増すごとに表情が乏しくなった。
そのが、ぎこちない笑顔を振りまいている。
一方、佐助の目の前では幸村が涙を必死で堪えようとしているが、実際は堪え切れていない。
しかしこればかりは叱ることもできず、背中を摩って口先だけで慰めることしかできなかった。
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