-007-
戦が終わって数日経ち、幸村は信玄に恐ろしいほど喝を入れられ、完全にとまではいかないが、立ち直りつつあった。
一方は、落ち込んでいる素振りは全く見せなかったが、決して正常ではなかった。
まず、あり得ないほど明るい。
もちろん表面上は、だが。
そして極力人と接しないようにしている。
そんな様子が気になって、佐助は時間が空いたときにの姿を探すのだが、なかなか見付からない。
任務は入ってないから、館内にはいるはずなのに。
その日も任務から帰ってを探した。
普段だったら、すぐ仮眠に入るところだが、そんなことは考えなかった。
そしてやっと見つけた。
「」
「あ、佐助さん。どうしたんですか」
どう声をかければいいか数日考えたはずなのに、顔を見たら言葉は一言も出なかった。
目の下には隈が浮かび、随分と痩せた顔を見て、何を言えば正解なんだ。
「あのさ、ちゃんと寝てる?」
「寝てますよー」
嘘だ。
そう思いながらも、否定することさえできなかった。
少し刺激を与えたら壊れてしまいそうな割れ物のような。
「どうしたんですか?」
「そんなに1人で抱え込まなくていいんだよ」
何かを言わなきゃ、と思ったときに、咄嗟にそんな言葉が出た。
「何も抱え込んでなんか……」
「隠せないなら隠そうとしないでよ」
からは段々と余裕が消え、貼り付けていた笑顔もいつの間にか消えていた。
「じゃあ、私は……どうしたらいいんですか……?」
はこれまで溜めていたものを全て吐き出すように話し出した。
「兄さんが死んで、私は、どうしたらいいか分かんないんです……」
「悲しいんじゃないの? 若みたいに」
「分からないんです。わたしは幸村様みたいに素直じゃないし、佐助さんみたいに器用じゃないから、すぐに切り替えなんてできないから。たぶんどこかにそういう感情捨てちゃったんですね」
そう言ってはまた笑った。
「じゃあなんでそうやって笑うの? いつもの仏頂面はどうしたの。外じゃ困るけど、その分ここにいるときくらい若を見習えば?」
「でも、そんな」
「見てられないって言ってんの」
突然、ずっと俯いたままだったが何かに包まれた。
驚いて顔を上げれば、そこには佐助の顔が。
そして佐助は静かに口を開いた。
「そりゃあ、俺たちが喜怒哀楽はっきりしすぎるのもどうかと思うけどね。でも忍だからってそんな殺すこともないと思うよ。そこまで鬼じゃないよ、俺様」
涙なんか出ない。
そう思っていたのに、ぽんぽんと背中を優しく叩かれると、不思議と涙は溢れてきて、どんどんと佐助の服を濡らしていく。
佐助は自分の腕の中で肩を揺らしているを見て、泣けるじゃん。と静かに呟く。
佐助がの頭をくしゃ、と撫でれば、それを境に、は声をあげて泣き出した。
流石にこれには驚いたが、もうこれで安心かな、と少し胸を撫で下ろす。
しばらくしたら、いつの間にかは静かになっていて、見下ろせば、は佐助の服を掴んだまま体重を預け、寝息をたてていた。
やっぱまだ子供かな、と佐助は小さく呟き、をその辺に寝かせ、自分も仮眠に向かった。
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