-009-
数年経ち、十勇士もきっちり10人揃って落ちつき、幸村が上田を任された頃。
も立派に女性と言われるまでに成長した。
しかし、一般的な女性の行動とは思わしくない、木の上での仮眠をとっていた。
否、とろうとしていた。
長い間とっていなかった睡眠は、勿論待ちわびていたもので、嬉々として瞼を降ろした。
だが、主の叫び声ですぐに起こされることになる。
「佐助ぇー!」
名前が呼ばれているの上司である佐助は、任務に出かけている。
しかも幸村の命で。
勿論と共にこの主も成長したはずなのだが、全く成長を感じられない。
自分の名前を呼ばれているわけでもないので、無視を貫き通そうとしていた。
……が、一向に叫ぶのをやめないので、深い溜め息を吐き、渋々重い腰を上げる。
自分で部下である佐助を、任務へ駆り出したのではないのか、この主は。
心中で文句をだらだらと言いながら、赤い主の前にスッと下り立つと、キョトンと目を丸くされた。
「幸村様、長は任務行きましたよ。あなたが命じたのではないのですか」
「おぉ、そうであった!」
忘れてたのか。
まぁ、初めてのことではないが、少し殴りたい。
「で、どうしたんです?」
「今日は餡の沢山のった団子が食いたい故」
嗚呼、無視を貫けばよかった。
そう思ったところでもう遅い。
「買ってきてくれぬか」
そのくらい自分で買ってきてくれ。
もしくは女中に頼んでくれ。
そんな本音は、今更この主には通じないことはわかっている。
どうせ、いち早く食らいつきたいから忍を使う、と言われるのがオチだ。
「他の忍にでも頼んでくださいよ」
「しかし、今いる忍ではが一番速いのだ!」
「私休憩中だったんですが」
「しかし!」
しかしじゃない、と言おうとして止める。
絶対引かないだろう。
「……餡を何本です?」
「餡50本とみたらしを30本頼むでござる!」
「餡を30本ですね」
幸村のとんでもない数字を却下し、早々と行きつけの茶屋に向かう。
行き着けと言っても、一度だってまともに団子を食べた記憶はない。
茶屋と上田城とを往復して、疲労、眠気共に倍増。
いい加減寝たい。
しかし上田城に着くと、佐助は早々と任務から帰っていた。
更に幸村の手には団子。
やはり団子なんか買いに行かなければよかった。
「お早いお帰りですね、長」
ふつふつと静かに怒るに、事情を知らない佐助と、鈍感な幸村が気付くはずもない。
「あれ、は休憩中じゃなかったっけ」
その言葉にぴくりと反応するも、無視して幸村に向き直る。
「幸村様、この包みが何か分かりますか?」
佐助はその包みを見て、大方何があったか予想できたらしく、あちゃー、と小さく呟く。
「おぉ! 団子、か……?」
やっと思い出したらしく、段々と青くなる。
それを見て、は怒るのも面倒になったのか、佐助に包みを押し付けて何度目かわからない溜息を吐いた。
「長、後お願い。寝る」
短くそれだけ言い、は消える。
「……で? 一応聞くけど、何したの?」
全てはお見通し、という目で訪ねてくるのだから言い訳などできるわけもなく、若干の八つ当たりを受けた佐助の説教は、普段より少し長かった。
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