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久しぶりの非番だから、この前は満足に食べられなかった甘味でも食べに行こうかと思っていたら、若い女中に声をかけられた。
「薬師の方が訪ねてきているのですが、どうしたらよいでしょうか?」
「薬師? どうして薬師なんかが……」
そんなことなぜ忍の自分に聞くのだ、と不満に思ったが、この若い女中はどうしたら良いか分からなかったのだろう。
「幸村様にお会いしたいと」
「今は何処に?」
「門前でお待ちいただいております」
「……私が対応します」
幸い出掛けようと思っていたため、女中と思われてもおかしくない格好をしている。
それにしてもなぜ最近は休養が削られるのか、不満だ。
「お待たせ致しました。ご用件をお伺いします」
門前で待っていたのは、青年だった。
薬師と言うから、勝手に齢三十は越えていると予想していたのだが。
「幸村殿にお会いしたいのですが」
「身元の分からない方を、簡単に城内に通すわけにはいきませんので、お話なら私がここで伺います」
用件を聞くと言っているのに、詳しい用件を言わない青年はかなり怪しい。
疑うことが仕事と言ってもいい忍のじゃなくても怪しいだろうこの男を幸村に会わせるわけにはいかない。
そんな彼女に、青年は怪訝な顔をする。
確かに先程の若い女中と、大して年齢の変わらないにそんなことを言われたら、不満だろう。
何より不満なのは自分だ、とは密かに舌打ちした。
「薬師として、幸村殿のお役に立ちたいと考えています」
「薬師には困っていませんが、なぜそのようなことを?」
「城下の町見て、穏やかさに感動したからです。腕は確かだと思いますよ」
薬師にはこの先も困ることはないと思う。
薬師自体は多いとは言えないが、優秀な忍が揃っているこの上田では、薬にも精通している忍もいる。
もちろん佐助やだって薬の簡単な調合はできる。
確かに優秀な薬師であれば、話は別だは思うが……。
「その腕を証明できますか?」
「強力な睡眠薬など、いかがでしょう」
「強力?」
「どのような人でも、十五秒もあれば眠りにつくかと」
簡単な方法だ。
薬や毒に耐性を持ってる自分が飲んで、帰ってもらおう、とそれを承諾する。
しかし自分一人では、もしものときに困るので、佐助に立ち合ってもらうことになった。
全ての経緯を話し、女中ということになっていることを言うと、女中は似合わない、と笑われた。
女中さんたちのようなおしとやかさは欠けていると自覚はしているが、そんなに笑うこともないじゃないか、と睨みつけてやった。
そんなやり取りの後、客間に青年を通し、青年の前には、その隣には佐助が座る。
あらかじめ調合された睡眠薬を、たった今淹れたお茶に注ぐと、粉末のそれはすぐに溶け、少し観察しただけで早々にが口を付けた。
無味無臭。
腕が悪いことはないらしい。
全て飲み干し、十秒ほどたったところで、異変は起こった。
視界が段々と霞み、ついには隣へ座る佐助に倒れ込んで、完全に眠ってしまった。
青年は正面で微笑んでいるが、佐助の方は驚きが隠せない。
十勇士であるからには当たり前なのだが、は忍隊の中でも屈指の実力者だ。
勿論毒物や薬物に対しては訓練して、耐性どころか効かないものがほとんどのはず。
それなのに宣言通り十数秒で眠らせてしまったのだから、事情を知っているこちらは驚愕以外に反応ができなかった。
(まじで……)
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上田城です。
何から何まで不憫なヒロイン。
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140303 修正