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とりあえずまだ薬師は余所者。
正体を明かす意味もない、ということで、まだは女中を突き通すことになった。


「お初にお目にかかります、幸村殿。私は藤十郎と申す者です。早速ですが、私をこの城に置いてくれませぬか」
「話は佐助から聞き及んでいる。腕の立つ薬師だと。是非ともこの上田にいてもらいたい」


やはりこうなったか、と藤十郎と名乗る男の背後で、二人の忍は思う。
しかし主が認めた者ならば、二人が拒否する権限はない。

もちろん、信用はそう簡単には出来ないし、するつもりもないが。


「感謝いたします。必ずお役に立ちます」
「うむ。佐助は空き部屋を一部屋用意。は藤十郎殿に城を案内して差し上げよ」
「はい。では藤十郎様、簡単に城を案内致します」


さて、どこを案内すればいいか。




***




結局生活に必要最低限の場所しか教えなかった。
城の中を無闇に歩き回られるのも困るし、まだ必要以上に城の情報を知られるわけにもいかない。
それ以上を知りたがるようであれば、更に警戒を強めるだけだ。


「他に気になる所はありますか?」
「いや、特には」
「ではお部屋に案内致します」


藤十郎に用意された部屋の位置は、正確には知らされていなかったが、一つだけ埃が舞っていない綺麗な部屋があり、すぐに分かった。

相変わらず家事の得意な忍である。
女中の仕事の方が向いているのではないか、というどうでもいい思考を即座に振り飛ばし、藤十郎を部屋の中へと促した。


「自室はご自由にお使いください。何かありましたら、私や女中に申し付けください」
「君は女中じゃなかったのか?」


なんとなく解っていたが、というような表情で尋ねられる。
予想通り、やはり頭は回るらしい。
正体を明かすつもりのも好ましくはなかったが、自分が撒いた種だ。
今更隠す方が不自然だろう。


「騙すようなことになり、申し訳ありません。私は幸村様に仕える忍であります」
「成程」
「では私は失礼致します」


こちらに向けてくる笑みがどうも生理的な嫌悪を覚え、そそくさと立ち去ろうとしたが、藤十郎に呼び止められた。


「忍なら、毒薬とかをいつでも取りに来てくれ」
「はい。ありがとうございます」


言われなくてもそのつもりだ、とは口には出さなかった。
腕の良い薬師ならば、毒薬も強力なものを調合できるのだろう。

忍にとっては嬉しいことこの上ない。


「では」


今度こそさっと立ち去る。
それにしても。


(休暇が丸一日潰れた…)


藤十郎によそよそしくしていた半分は信用していないからだが、もう半分は休暇を潰された八つ当たりだった気がする。

久しぶりにゆっくり団子を食べられるかと思ったのだが……。
よく幸村と団子は食べるが、油断しているとすべて食べられてしまうので、ゆっくりとは食べさせてもらえない。

本当に最近は休みを奪われることが多い気がする。


(解せない!)
(何が?)
(お、長!)





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***
ねもい。


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140303 修正