「敵襲ー!敵襲ー!」
-018-
不敵に微笑む彼は、の知っている藤十郎とは違う。
拘束を試みたらあっさり捕まってくれるし、一体何を考えているんだこの男。
「抵抗する気はないのね」
「あなたに勝てるとは思ってないからね。それにしても、もうちょっと粘れると思ったんだけどね。あなたとは仲良くなれたと思ったんだけどなぁ」
「自惚れないで」
一瞬でもこの男を信用した自分への苛立ちも兼ねて、今すぐこの男を殺してしまいたいが、そうもいかない。
それにいつまでも相手をしているわけにもいかない。
「あなただってそのうち症状が出ますよ」
予想はしてたが、忍にも効くようなものか。
だがそんなことを気にしている暇はない。
「感染はするの」
「残念ながら感染できるほどのものは間に合わなくてね。感染力はないよ」
「随分簡単に教えてくれるんですね」
「早く見破ったご褒美さ」
いちいち口調が気に障る。
これ以上は苛々が募るばかり、と近くにいた忍に藤十郎は任せ、自分は敵襲の最中へと向かおう。
「才蔵さん! 敵は?」
「竹中半兵衛率いる軍だそうだ。数は多くない」
少数精鋭か。
相手の数がどれほど少なかろうが、今の状況は厳しい。
「幸村様の方の戦は片がついたらしい。すぐに帰還するとのこと」
「さすが早い……ありがたいですね」
後始末に最低限の数を置いて、ほとんどがこちらに向かっているらしい。
感染力はないと言うし、このまま真っ直ぐ帰ってきてもらおう。
「それまで持ちこたえるぞ」
「はい」
気を引き締めて才蔵と共に敵襲のあった場へと、兵より先に……来たのだが。
「いな…い……?」
そこは農村部なのだが、荒らされてさえない。
被害といえば、見張りが数人殺されているだけ。
「俺は城の警備に戻る。お前は一応この辺りを」
「わかりました」
城を落とすのが目的だろうか。
何か違う気がする。何かが引っかかる。
その時、ふと小さな気配を近くの山の中から感じた。
罠の可能性のほうが高いだろう。
「……上等」
気配は一人だ。
返り討ちにしてやる。
しかし山の中の地理はこちらの方が詳しいはず。
そんなところになぜ誘き寄せる必要がある。
「……っ…………!」
完全に一つ忘れていた。
気付けば、体が段々言うことをきかなくなっている。
しかしもう見事に山の中へ誘き寄せられてしまっていた。
「……くっ…!」
突然目の前から刃物が襲ってきた。
一瞬見えたあの剣は恐らく関節剣。
手に持っていた苦無でそれは防いだが、今の状態で何度も厄介な動きをするそれで攻撃されたら、すべてを防げる自信はない。
「竹中…半兵衛……」
「どうだったかい?うちの優秀な薬師は」
「目的は何?」
「失敗はできないからね。確実に甲斐を豊臣のものにするためさ」
予想外にあっさり目的を吐いた。
生きて返す気がないってか。
「かの有名な十勇士がいなくなれば上田を落とすことなど容易い。手始めは君さ」
「なるほどね」
確かにこの状況は相当不利、というより絶対絶命だ。
正直立っているのさえも辛い。
「さようなら」
その言葉を皮切りに、次々と刃が襲ってくる。
それを苦無で防ぐのがやっと。
増えるの刀傷に、半兵衛の笑みはどんどん深くなる。
「……つっ……!」
突然目眩が襲い、その隙に容赦なく脇腹に刃が入り込んだ。
ぼたぼたと血がこぼれ落ち、急所は外したにしろこの出血量はまずい。
すぐにまた刃はを目掛けて襲おうとしていて、そろそろ死を覚悟する頃かな、なんて呑気に考えていたら、ふわっと体が浮いた気がした。
ついに立っていられなくなったか、なんて思ったところで意識を手放した。
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半兵衛の口調なんてわからない…
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