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「まさかこんなに早く来るとはね、予定外だよ」
「好き勝手やってくれたねー、まったくもう」


丁度上田城からの帰り道、素通りしてしまいそうになるほどの小さな音が耳に入った。
耳を澄ませてみれば、それは間違いなく刃と刃が交わる音のような気が……。
他は鳥の鳴き声一つしない静まり返った中、場違いな音が気になり、音のする方へ向かった結果がこれだ。

素通りしなかった自分を褒め称えたい。


「惜しかったね。まだ君を相手にしたくはないから、今日のところは失礼するよ」


そう一言だけ残し、半兵衛は去っていった。

とにかく相手が退いてくれたならば、早くを城に運ばなければ命に関わる。
ただでさえ高熱だというのに、ここまで血を流していたら、いくら鍛えてる忍と言えども危険だ。


「久しぶりに弱ってるの見たな……」


彼女の兄、六郎が死んで以来か。
あのときとは事情が全く違うが。


「おー、佐助! 遅かった…な……?」


幸村は自分より大分先に城に帰ってると思っていた佐助がなかなか帰ってこないもので、随分と不思議がっていたようだ。
しかし佐助が腕に抱えるを見た瞬間、言葉を失った。


「報告は後でする」


幸村にそれだけ伝え、忍小屋の一室へとを運ぶ。

丁度よく帰ってきた軍医に、を診てもらうことができた。
診てもらってる間、佐助は扉の外で待つ。

その隣へ音もなく才蔵が現れたと思ったら、突然口を開いた。


「柄にもなく焦ってたそうじゃないか」
「そんなことないよ」


言われてみれば、そうだったかもしれない。
これまで、が怪我をして帰ってきたことは少なくないが、たとえ重傷でもまったく表情にも出さないから、動揺したのかもしれないな。


「心配か?」
「そりゃあねー」


城内は、被害が増えることなく落ち着いた。
才蔵が尋問したところ、藤十郎はあっさり口を割り、倒れている者も二日以内には良くなるとのこと。
完全にだけを狙っていたのである。

原因は、藤十郎に近寄った者が感染するように、服に細工をしていたらしい。

後は藤十郎をどうするかだ。
敵には回したくなかったが、こうなった以上生かすわけにもいかないだろう。




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140304 修正