-021-
大丈夫とは言ったものの、視点は定まらないわ、頭痛はするわ。
呼吸まで普段通りとはいかず、情けない吐息が出てしまう。
もちろんこの自分の上司だって、聞かずとも調子の悪さは承知しているだろう。
だからわざと強がってみた、というよりも、自分は甘える術を知らないだけかもしれない。
でも、ほんの少しだけ、この撫でている手を止めないでほしいと甘えたい。
人は弱ると精神も弱るみたいだ。
「ほーら、最低でもあと2日は発熱が続くらしいから大人しく寝てなさい。怪我も酷いししばらくは動かさないからね」
「動けるようになったら、動きますよ。この、忙しい時、に、わたしが」
「はいはい。文句はそのうち聞くから、呼吸も辛いのに喋らない」
「……ふふっ」
ぴしゃりと叱られたはずなのに、何故だかおかしくて、堪えきれずに笑いが漏れてしまった。
「……何」
尋ねてきた声は、不審そうで、怒気をも含んだ声だったが、一度おかしくなったら止まらない。
「長……口調が、母のそれ……」
「寝ろ!」
ついには怒鳴られたが、の方はゆるく間延びした返事を返して、すぐに寝息を立て始めた。
(こっちの心配も知らないで……)
口調こそいつも通りだったが、全体的に弱々しい声に、心配は増すばかりだった。
確か何年か前も、母様のようだ 、って言われた気がする。
自分でも今回に関しては異常な程、に対して過保護だとは薄々自覚している。
それでもこの少女らしく見せない少女が、たまに弱っている姿を見るとひどく動揺し、いつもの冷徹な自分ではいられない。
唯一の肉親だった彼女の兄代わりのつもりなのか、それとも……。
どの道考えても埒が明かない、な。
大人しく側を離れよう、と立ち上がろうとすると、忍装束が何かに引っかかって止まった。
引っかかるものなどないはずなのに、とそこを見て少し驚いた。
「はぁ……」
もう一度座り直して、恐らく無意識にだろう握られた裾を眺める。
こうやって甘えたくて甘えたくて、でも甘えられないといった不器用さが、放っておけない大きな要因なのかもしれない。
(こんなときくらい甘えてくれてもいいのにね)
いやでも忍としてはまずいのか。
こんなときくらい、という気持ちと、忍隊の長としての気持ちが葛藤する。
こうやって悩んでいること自体、忍としてはどうなんだろうか。
自分もこの武田に大分毒されたな、と苦笑する。
そうだ、ここは武田なのだ。
わざわざ忍らしく振る舞おうとすることはないし、逆に忍だから、と言うと自分の主は怒る。
それがあってこそ忍隊が発達したのだし、けじめをつければ何の問題もないだろう、と無理矢理自分に言い聞かせた。
(……かわいい)
(寝てると童みたいだなぁ……)
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お久しぶりです…。
140306